長年漢方相談をしていると、様々な生活パターンがあることを知ります。定期的に日勤、夜勤が入れ替わる方、日によってばらばらな方もおります。これは仕事上、仕方のない事ですが、極一部で日中の仕事なのに3時間ほどしか睡眠をとっていない方がおります。この生活を30年以上続けているため、そう簡単には改善できないと言います。
漢方の世界での睡眠は、「陰血」を補充する時間だと考えます。全身の細胞へ栄養を届けるために、「腎」の働きにより必要量の「陰血」がつくられて、「肝」へ貯蔵されます。朝にはMAXまで貯えられた「陰血」が「気」を伴って全身をめぐることで私達は元気に働けるのです。(「陰血」は脾胃からもつくられる)
では、睡眠時間の少ない方の場合、どのようなことが起きているか想像してみましょう。
夜中の2時に睡眠に入り、日中に摂取した栄養を「陰血」へと変えていく訳ですが、3時間後の朝5時に目が覚めたら、一般的な睡眠をとっている方からすると「蔵血」が半分も進んでいないことになります。では、体力である「陰血」が途絶えてしまったらどうなるのでしょうか。
ここでイメージしやすいようにスマホの充電で例えてみます。スマホを人体、充電時間を睡眠とします。現在の充電速度は速いと思いますが、仮に8時間かかるとしましょう。しかし、3時間ほどで充電をやめてしまったら、お昼過ぎた頃には電源が落ちてしまいます。
でも、人体は電源が落ちたように止まったりはしませんね。疲れは実感すると思いますが、からだはそれなりに動いてくれます。これは「腎」の力であり、生命維持と、まだ残っている仕事をこなすために尽力してくれます。スマホで言うなら予備バッテリーが作動すると思えばよいでしょうか。
しかし、この予備バッテリー(腎)は有限です。
もともと身体の強い方の予備バッテリーと普通の方では貯えられている電力の差が出ます。私が今回お話ししたかったのは、この予備バッテリーを減らさないようにすることで、今後の健康寿命の期間が変わってくると言いたいのです。今は良いでしょうが、睡眠が少ないことでこの予備バッテリーが使われっぱなしの状態であることを私は危惧します。
正直言って、私もどれだけの予備バッテリーがあるか分かりません。もちろんお客様のものも測ることはできませんが、漢方相談することで予測します。40歳を超えたらなかなか無理も利かなくなります。そんな時にこの「腎」を補う漢方薬があることを思い出してください。きっと健やかで穏やかな人生をサポートしてくれるはずです。