前回は中途覚醒の相談が多いことを書きました。これは現代でいう消化器、中医学では「脾」ですが、ここのトラブルと書きました。ただお酒を飲まれる方は、中途覚醒が多いと思います。お酒は飲むと酔います。身体からお酒が抜けると醒めます。当たり前のことですが、これが睡眠中に起こると目が覚めることにつながる場合があります。私もよく体験しますが、これは対応が違いますので別にしてください。
不眠症に戻ります。次に多いご相談が「なかなか寝付けない」です。入眠困難は経験のある方は多いと思います。生きていれば大なり小なりのストレスはあるはず、これが入眠困難の原因です。お客様にお聞きすると、「今日一日の反省会」、「明日の段取り」などを考えているとすぐに1、2時間が経ってしまうそうです。
交感神経が優位だと考え事が止まりません。自律神経の乱れは、中医学でいう「肝」の乱れにつながります。
「肝」には2つの働きがあります。それは「疏泄」と「蔵血」です。
「疏泄」難しい言葉ですが、3つの内容があります。ひとつは「気機による調節」ですが、体内の流れによる活動です。漢方の考え方として体内には「気・血・水」の三つが流れていると言われています。「血・水」は文字通り液体です。これ自体では流れません。そこで「気」というエネルギーが液体を押して全身くまなく流すことができます。この液体には栄養が含まれますから、これがどれだけ大事なことか分かりますね。加えて消化機能の促進と感情です。疏泄が順調なら気持ちも明るくなります。逆に不調なら感情に変化が表れやすくなります。「肝気」がつまれば気持ちが沈み、興奮すれば起こりやすくなります。
もう一つは「蔵血」です、「肝は血を蔵す」ですので、「血」を貯蔵して、血量を調節する働きがあります。これは「蔵血」と「疏泄」機能のバランスが保たれてこそ正常に働きます。
長ーい前振りが終わり、本題の入眠困難ですが、「肝」の「蔵血」作用が機能しなくなることで、情緒が乱れて、睡眠不安、驚きやすい、おびえる、よく夢を見る、寝言、幻覚などの症状が起こるようになるのです。
このことから、ストレスをためて「肝」の疏泄に不調が来れば、血量の調節ができなくなり、「肝血虚」の状態から入眠困難が起きます。
睡眠の質を考えるのならば、「血」を増やすことが快眠を保つ一つの方法です。